肝炎について
肝炎は放っておくと劇症肝炎や肝臓がんになり、命に係わるかもしれない怖い病気と言えます。肝臓は体内の毒素やアルコールを分解してくれる大切な臓器です。その肝臓に炎症が起こり、肝細胞が破壊される状態を肝炎と言います。肝炎に至る原因としては、肝炎ウィルス(A型・B型・C型)が最も多く約80%を占めています。ウィルス性の他には、アルコール性肝炎・薬剤による肝炎・遺伝による肝炎などがあります。肝炎のうち、肝炎ウィルスに感染して数カ月以内に発症して、その多くが1~2カ月程度で症状が治まるものを急性肝炎と言います。慢性肝炎は急性肝炎が治りきらずに、肝細胞の破壊と修復が6ヶ月以上にわたって続く状態をいいます。慢性肝炎の多くは自覚症状が無く、健診などによって発見されることが大半です。劇症肝炎になると、風邪のような症状に加え、鼻血や意識障害などの自覚症状が起こり、重い合併症になります。劇症肝炎では、70~80%の高い確率で死に至ります。肝臓は多少のダメージでは痛みを感じない働き者の臓器なので、健康診断で肝機能の数値が異常だった場合には精密検査を受けましょう。
【肝炎】の多くは肝炎ウィルスが原因
肝炎ウイルスにはA型・B型・C型・D型・E型などが存在します。
日本ではウイルス性による肝炎が80%を占めており、特にA型・B型・C型ウィルスの感染による肝炎が多い。
A型・E型肝炎ウイルスは主に水や食べ物を介して感染し、B型・C型・D型肝炎ウイルスは主に血液・体液を介して感染します。
これらのウイルスが肝臓に感染して、炎症を引き起こすのがウイルス性肝炎です。
ここでは、肝炎ウィルスによって発症する【肝炎】について説明いたします。
A型肝炎
多くは急性肝炎を発症するためにA型急性肝炎ともいいます。
A型肝炎は経口感染によっておこり、体内に入ったウイルスを排除しようとする免疫反応がおこります。
この免疫反応によりA型肝炎ウイルスに感染した細胞ごと攻撃されるため、肝臓に炎症が起こる肝炎です。
A型肝炎では、ウイルスに感染して約1~2カ月の潜伏期間をおいて症状が現れます。
初期の症状は38℃以上の発熱、体がだるい・食欲がない・嘔吐・腹痛・下痢などです。
こんな、風邪に似た症状はA型肝炎だけに起こる特徴で、発症から1週間で黄疸が現れます。
近年、衛生環境の良くなった今の日本では少なくなりましたが、衛生環境の悪い海外で感染する人は増えています。
B型肝炎
B型肝炎ウイルスによって起こる肝炎で、血液や体液を介して感染して起きる病気です。
原則として個人から個人へ血液感染します。
かつては、輸血で感染する代表的な肝炎の1つでしたが、輸血用の血液のチェック体制が整備されて以来、輸血が原因でB型肝炎に感染するケースはほとんどなくなりました。
現在の主な感染経路は、出産時の母子感染、医療従事者の針事故などによる感染、セックスによる感染などが上げられます。
思春期以降にB型肝炎ウイルスに感染しても、多くの場合一過性感染で終わります。
B型肝炎ウイルス感染後、一過性の急性肝炎を起こすことがしばしばありますが、慢性化することはほとんどありません。
幼少時期に母子感染などによって感染した場合には、長期間患者さんの体内で共存します。
自己の免疫力が高まる思春期を過ぎると、B型肝炎ウイルスを病原菌として認識し、攻撃が始まります。
この時、免疫力を持ったリンパ球がB型肝炎ウイルスの感染した肝細胞も一緒に壊してしまうので肝炎が起こります。
思春期以降に一過性の肝炎を起こした人のうち、10-20%の人は慢性肝炎へと移行します。
C型肝炎
C型肝炎ウイルスによって起こる肝炎で、血液を介して感染しておこる病気です。
この肝炎ウイルスの感染力は弱く、単に血液に触れたぐらいでは感染しません。
そのため、母子感染やセックスによる感染も極めて少なく、日常生活で移ることはほとんどありません。
原因の多くは手術や輸血によるもので、医療環境の整った近年では減少傾向にあります。
他の肝炎より症状が軽いのも特徴で、発症しても気が付かずに治癒していたり、健診などで慢性肝炎として見つかることがよくあります。
C型肝炎ウイルスから急性肝炎になると60~80%の割合で慢性化していきます。
慢性肝炎は放っておくと約20年かけて、肝硬変や肝臓がんに進行する恐ろしい病気です。
現在日本では約150万~200万人のC型肝炎ウイルス感染者がいると推測でき、年間3万人が肝炎から肝硬変や肝臓がんになり亡くなっています。
C型肝炎ウイルスは肝炎ウィルスの中で最も排除治療が必要だと言え、インターフェロン注射やリバビリンという飲み薬を服用する事で治療します。
D型肝炎
D型肝炎ウィルスはB型肝炎ウィルスが共に感染した場合のみに肝炎を発症します。
D型・B型肝炎ウィルスに同時感染した場合の急性肝炎は劇症化しやすいので注意が必要です。
E型肝炎
E型肝炎は、E型肝炎ウイルスの感染によって引き起こされる急性肝炎(稀に劇症肝炎)で、慢性化することはありません。
自然界における感染のサイクルは未だ不明ですが、動物からヒトへの感染事例の報告もされていることから、今では本疾患は人獣共通感染症として捉えられています。
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